憧れの染谷くんは、いつも
タイミング良くサンドイッチと飲み物を乗せたトレイを持った店員さんが現れて、私はそのまま押し黙った。大好きで時々テイクアウトまでしてしまうサンドイッチにかじりつく。室長はアイスコーヒーをストローでひとくち吸って、何でもないことのように言った。
「高瀬君から、松井さんもここのサンドイッチが好きだって聞いてね」
「ーーっ?! ゲホッ、ゴホ」
「大丈夫? はい」
手渡された紙ナプキンを口に当てながら、私は深呼吸をした。室長は意外とオープンな性格らしい。やがて少し落ち着いた私は、ごくごく小さな声で言った。
「そのことなんですけど……高瀬くんに聞いてびっくりしました。本当に付き合ってるんですね」
「年甲斐もなくって言われそうだけどね、楽しんでるの」
上品にサンドイッチを食べながら、室長は見惚れてしまうくらいの笑みを浮かべた。恋をしている少女のように、頬がほんのり赤い。チークだけでは出せない血色の良さに、私は胸の奥が暖かくなった。
「高瀬くんは、最初は相手にされなかったって言ってましたけど」
「そりゃそうでしょう。だって普通は、たちの悪い冗談かと思うじゃない」
ふふふと思い出し笑いのように声を上げ、愛しいものを見つめるような目をした室長に同性ながら思わずドキドキしてしまった。