憧れの染谷くんは、いつも
長い帰り道
染谷くんと両思いだということが発覚してから、一週間が過ぎた。ちらちらと感じる視線を避け続けている。
高瀬くんには「そろそろ慣れただろ」とからかわれたけれど、この環境に慣れる日は果たして来るのだろうか。
人目を気にしつつも、私はこうしていつも通り毎日を過ごしている。
〝今日一緒に帰れる?〟
そんなメールに気付いたのは、昼休みに何気なくスマートフォンを覗いたときだった。
あの日からほとんど顔を合わせることがなかったので、文面を見た瞬間思わずスマートフォンを取り落としそうになる。周りを見渡すと、私の変な動揺に気付いた人はいないようだった。
(一緒に帰りたいけど、今日も残業かもしれないし……)
染谷くんを待たせるのは気が引けたので、私はすぐに断りのメールを送信した。
(私って、可愛げがないなあ……)
こういうときの受け答え方が載っているハウツー本があったら欲しいな、と本気で考えてしまう。
そしてやはり予感は的中し、定時では帰れずに3時間も残業となってしまった。