憧れの染谷くんは、いつも
ランチ仲間の眼差し
(はあ……今日こそは決めないと)
そんなことを考えながら食後のコーヒーを啜っていると、視線を感じる。顔を上げると、にこにこと嬉しそうな顔の室長と目が合った。
「悩みごと?」
「え?! ……分かりますか?」
「もちろん」
必死に隠しているつもりが、全く隠せていなかったようだ。ふふふと笑う室長はゆっくりカプチーノの入ったカップに口を付ける。優雅で上品な雰囲気の彼女にこんな話をすることがとても恥ずかしい。
「……もうすぐ、染谷くんの誕生日なんです、けど」
「あら」
すっかりランチ仲間となってくれた室長とは、時間が合えばこうして外食する仲になった。彼女曰わく、〝仕事以外は気さくに付き合う〟がモットーなんだとか。
「もうプレゼントは用意した?」
「いえ、それがまだ……ハンカチにしようかと思っているんですけど難しくて」
私は、ここ数日の出来事を室長に話した。
お店に行っても緊張してしまいうまく買い物ができないことを伝えると、また笑っている。
「松井さんて、そういうところかわいいよね」
「お恥ずかしいです……」
この歳になってなんて子どもじみたことをしているのだろうと思う。きっと室長だって呆れているはずなのに、こうして親身になって話を聞いてくれる。