憧れの染谷くんは、いつも
突然、室長は私の顔を覗き込むように上目遣いになった。
「松井さん、この頃顔色いいね。こっちとしても、助かるわ」
「……!」
そう、室長の読みは当たっている。実のところ、染谷くんと付き合い始めてから体調が良くなってきているのだ。前回病院に行った際には、ついに薬が処方されずに様子を見ることになったのでとても嬉しい。
「例の〝染谷効果〟って絶大ね」
うんうんと頷く室長の言葉に、私は頭を押さえた。ーーそんな風に名付ける人間は、ひとりしか知らない。
(絶対高瀬くんだ……)
普段、室長は恋人である高瀬くんと一体どんな会話をしているのだろう。聞いてみたい気もするが、少し怖い。私にもう少し心の余裕ができたら尋ねてみようと思った。
「ハンカチを貰っても、困るでしょうか」
「そんなことないと思うな。何を貰っても彼なら喜びそうだから」
「そんな! 私、センスが無くて」
「センスと言うか……ね」
そこまで言うと意味のありそうな視線を向けられて、そのまま室長は黙ってしまった。どういうことなのか詳しく聞こうと思ったその時、スマートフォンに受信を知らせるランプが点く。