憧れの染谷くんは、いつも
初めてのプレゼント
「きょ、今日こそは……!」
仕事を終えた私は再び、昨日も(一昨日も)来たスーツ専門店にやって来ていた。心の中で気合いを入れ直して自動ドアを通る。
目当てのハンカチコーナーにたどり着いたのはいいものの、さっきから目移りばかりしていた。
(こんなに種類があるんだ。うーん、どうしよう……)
この店は会社の最寄り駅からほど近い場所にある。普段仕事の時でさえスーツを着ない私が、まさかひとりで入店する日が来るとは。本当に、人生どうなるかわからないものだ。
「これなんていいかも」
私は、たくさんあるハンカチのうちのひとつを手に取った。シンプルだが清潔感のあるライトブルーが染谷くんにぴったりだと思う。さり気なく光沢もあって品が良い。
「いらっしゃいませ。ご贈答用ですか?」
悩んでいると、スススと店員さんが近付いてきた。こういった専門店でよくあるマンツーマンな接客には慣れないため緊張するが、話を聞いてもらう。
「そうですね。ハンカチでしたら、合わせてネクタイはいかがでしょう?」
「ネクタイ、ですか?」
「セットで購入されるお客様も多いんですよ」
「へえ、そうなんですね……あ」
これってセールストークかも、と思いつつも、案内に従う。近くの棚に並べられていた色とりどりのネクタイを見ているうちに、完全に心を奪われてしまった。