憧れの染谷くんは、いつも

(ネクタイも素敵だな……)


自分のプレゼントしたネクタイを締めて仕事をする染谷くんの姿を想像すると、思わず口元が緩んでしまった。
こんなことを考えてしまうようになるとは、知らず知らずのうちに私はどんどん欲張りになっているのではないか。


(いけない、私ったら!)


そんな煩悩を慌てて振り払いながら、私はしばらくの間ネクタイ選びに没頭した。


(こ、これにしよう……)


しばらく物色した後、やっとその中のひとつを手に取った。最初に気になったハンカチと同系色のもので、控え目に小紋柄が入っている。オーソドックスな色と柄だろうし、もしかしたら似たようなものを持っているかもしれないと不安になりつつも、私はレジへ向かった。


「プレゼント用に包装してもらえますか?」

「かしこまりました。……良かったですね、無事に決まって」

「えっ?!」


財布を開けた手元が狂って、危うく小銭をばらまきそうになった。よく見ると、口元に微笑みを浮かべたまま包装をしてくれている店員さんは、昨日(と、もしかしたら一昨日)見かけた人に似ている気がする。


「ハイ……お世話になりました」


〝一部始終見られていた〟という出来事に、この上ない恥ずかしさでいっぱいになった私は、そそくさと店を後にした。

< 99 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop