恋愛と失恋の果てに。
「尾野……?」
課長は、頭を上げる。
「もう……いいんです。
課長の気持ちは、分かってましたから。
ただ……私が自分の気持ちに対して
上手く整理をついていなかっただけ。本当は、
すでに、こうなるって分かってました」
「ずっと課長は、梨々花ちゃんや奥さんしか
見ていなかったもの。
だから……ご家族を大切にしてあげて下さい」
私は、精一杯の笑顔を見せた。
私があーだーこーだと言ったら
課長を困らしてしまう。
引くべきは、私なのだ。
私が課長の家族を壊す権利はない。
そもそも私と課長は、何も無かったのだから。
「尾野……お前……!?」
「そ、それに私は、すでに新しく恋をしてるんです。
阿部さんと言う……新しい恋人が出来て
課長のことなんて……もう好きじゃありません」
そう言って隣に居た阿部さんの腕をギュッと
しがみついた。
手は、ガタガタと震えているけど
もう少しの我慢だ。頑張れ……私。
「千奈美さん……」
阿部さんも驚いていた。
「……今さら課長のことなんて……もう
整理もついて好きじゃなくなりましたから。
休んだのだって……阿部さんと2人で
過ごしたかったから、ずる休みをしただけなんです」
必死に言い訳をする。
もう……半分以上言っていることが滅茶苦茶で
下手な言い訳だろう。
でも……今の私は、それが精一杯の強がりだった。
お願い……もう帰って!!