恋愛と失恋の果てに。
阿部の秘密。
ガタガタと震える手で阿部さんの腕をギュッと
ひたすら掴んでいた。
すると……阿部さんは、私を抱き締めてくる。
「……もういいだろ。
あんたは、彼女をこれ以上苦しめる気か?
用が済んだら早く立ち去れよ」
課長に冷たく言い放つ阿部さん。
阿部さん……
「……そうだな。尾野……すまなかった」
課長は、それだけ言うと立ち去ってしまった。
私は、緊張の糸が切れて
そのまま気絶してしまった。
「千奈美さん!?」
遠くから阿部さんの声が聞こえてくる。
しかし景色は、真っ暗で何処に居るのかも
分からなくなってくる。
そんな中……私は、課長のことばかり考えていた。
優しく微笑む姿は……一体誰のためだろう。
胸がギュッと締め付けられそうになり
涙が溢れて止まらなかった。
何時間経ったか分からない。
目を覚ますとベッドの上で眠っていた。
「う~ん。」
寝返りを打つと頭痛がまだしていた。
起き上がろうとしたら
「あ、目が覚めた?」
阿部さんが現れた。手には、小鍋を持っている。