恋愛と失恋の果てに。
「違うの……たまたまなの。
さっきナンパされて困っている時に助けて下さって」
私は、慌てて弁解をする。
「…………。」
課長は、黙ったままで言い訳をしない。
そうしたら阿部さんは、ペコッと頭を下げてきた。
「そうですか。彼女を助けて下さりありがとうございます。後は、俺がしますので。
行こう千奈美さん」
私の肩を抱きながら強引に連れて行こうとする。
あっ……課長!?
チラッと見た課長の後ろ姿は、どこか寂しそうだった。
阿部さんが用意してくれた車に乗せられる。
運転手付きの高級車だったが今の私は、
そんなことより課長の姿が頭から離れなかった。
目の前に課長が現れた時は、
心臓が止まるかと思うぐらいに苦しくて
逃げ出したくなった。なのに……
いざ離れようとすると離れたくないと思い胸が苦しくなる。
まるで禁断症状みたいに……。
これがさゆりの言っていた依存なのだろう。
私と課長は、一緒に居るとマイナスにしかならない。
どんなに好きでも……お互いに辛いだけ。
「千奈美さん。大丈夫か?」
阿部さんが心配そうに私に声をかけてくれる。
その言葉にハッとする。
「大丈夫……です。
ちょっとびっくりしちゃって……」
モジモジと言いにくそうに答えた。
課長のことを考えていたなんて答えにくいし。
すると隣に座っていた阿部さんは、私の手を
ギュッと握り締めてきた。