恋愛と失恋の果てに。
悲しみの退職。
案内されて歩いていると
そのお姉さんが
「そう言えば、さっきの話だけど……お見合い
まだ無効になってないわよ」
そう言われた。
無効になっていない!?
「あの……でも……」
「希美姉さん……」
慌てて止めようとする阿部さん。
どう言うことだろうか?
「あら、あなたがちっとも言わないから
私が言ってあげてるのよ?
断られてもまだ、好きでお父様に話せなかったのよね」
フフッと笑いながら教えてくれるお姉さん。
阿部さんが!?
驚いて阿部さんを見ると耳まで真っ赤になっていた。
「そ、それは、内緒だって言ったじゃないか!?
こんな女々しくてなかなか諦めきれなかったから
言えなかったなんて恥ずかしいのに……」
「あら、いいじゃないの。
隙がある男は、魅力的よ?」
フフッとまた笑うお姉さん。
私のことを想って……
心臓がドキッと大きく高鳴った。
そんなドキドキしたまま社長室に来てしまう。
上のお姉さんが先に部屋に入り挨拶をしてくれる。
「社長。連れてきました」
「あぁ、中に通せ」
社長室の中から低くて素敵な声が聞こえてきた。
この人が……社長で阿部さんのお父様!?