恋愛と失恋の果てに。
勝手過ぎるお願いに呆れているのだろうか?
「俺からもお願いします」
阿部さんも同じく頭を下げてくれた。
すると溜め息を吐きながら
「分かった。希美。
彼女の新しい配属先と手続きを」
上のお姉さんに指示を出した。
「分かりました、社長」
えっ……?
じゃあ、ここで働けるんだ……?
「ありがとうございます。社……父さん」
阿部さんは、嬉しそうに顔を上げる。
「うむ。お前が、そこまで頼むなら仕方がない。
だが、あくまでも再就職としての扱いだ。
特別扱いをしないつもりだから、そのつもりで
仕事に励みなさい」
「はい。ありがとうございました」
私も嬉しくなりもう一度頭を下げた。
思い切った行動と思う。
でも、少なくても新しい光が見えてきたような気がした。
ずっと閉じ籠っていたから。
社長から出ると私は、阿部さんにお礼を伝える。
「阿部さん……ありがとうございます。
あの……私のために就職先とかお父様に頼んで下さって」
申し訳ないことをさせてしまった。
しかし彼は、私を見るなりニコッと笑って
「アハハッ……俺は、別に大したことはしてないよ。
君がちゃんと意思を持って伝えたから父さんも
受け入れてくれたんだ。
あの人……自分が納得しないと受け入れない性分だから。でも見る目は、確かだから」
そう言ってくれた。