恋愛と失恋の果てに。

見る目は、確か……。

彼の言葉にドキドキしてしまう。
それを見ていた上のお姉さんが私達に
「あなた達。ラブラブなのは、いいけど
早く手続きに関しての説明をしたいから急いでちょうだいね」
クスッと笑いながら注意をされる。

ラブラブって……!?

「す、すみません」
恥ずかしくなり慌てて返事をした。
阿部さんとは、そんな関係じゃないんだけどな。

小会議室に連れて行かれると
上のお姉さん……希美さんに契約書などの説明をされる。

「じゃあ、早めに前の会社に辞表を出して下さいね。
それから……この契約書をよく読んでサインと実印をお願いします」

「分かりました」
さすが秘書なだけあって説明も的確で分かりやすい。
それに近くから見ても綺麗な女性だな。

まるで課長の奥さん……天宮麻梨子みたい。
そう想像したら何だか激しい動悸がしてくる。
うっ……こんな時に。

胸を押さえて息を整えようとしていたら
阿部さんがそれに気づいてくれる。
「千奈美さん!?大丈夫か?」

「だ、大丈夫……です」
ゼーゼーと乱れる呼吸。
大事な時に発作が起きるなんて……

焦れば、焦るほど動悸が激しくなっていく。
どうしょう……。
涙が溢れて泣きたくなってきた。

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