恋愛と失恋の果てに。

「……すみません……」
再就職は、取り消しだろうか……?

せっかく、新しく頑張ろうと思えたところなのに。
しゅんと落ち込んでしまう。

「なら、早めに医者からの診断書を出して
ちょうだいね。
新しい保険証を発行しないといけないし
何よりその方が何か遭った時に会社から
サポートが出来るわ」

えっ……?

「あの……病気でも……いいんでしょうか?」
意外な返事に驚いてしまう。

すると希美さんは、クスッと笑う。
「陸斗がそこまで熱を入れる彼女ですもの。
期待してるわよ?
何か困ったことがあったら遠慮なく私に
聞いてちょうだい」

「は、はい。ありがとうございます」
嬉しくて阿部さんと顔を見合わせる。
阿部さんのお父様もお姉さん方も優しい人達ばかりだ。

帰りは、阿部さんが仕事があると言ったので
タクシーで帰った。
その際には、タクシーのチケットを渡された。
色々とお世話になりっぱなしで申し訳ない気持ちになる。

タクシーに乗りながら色々考えていた。
勢いで決めちゃったところもあるけど……これで
良かったんだと思う。

いつまでも課長との過去に囚われていたら
私は、きっとさらに病んでしまう。
それに……

阿部さんの笑顔を思い浮かべる。
確かに……少しずつだが、私の気持ちも変わろうとしている。
それは、まだ小さな光だけど見えたような気がした。

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