恋愛と失恋の果てに。

その夜。
電話でさゆりに再就職のことを話した。

『えぇっ!?阿部さんって人。
そんなデカい会社の御曹司だったの!?』
驚きの声を上げてくる。

「さゆり……声が大きいから
うん。実家が会社経営をしていたけど……まさか
芸能事務所をやっていたなんて驚いちゃった」

あれは、さすがに驚いた。

『いいじゃん、いいじゃん。
上手くいけば千奈美は、社長夫人で玉の輿。
さっさと阿部さんとやらとくっつきなさいよ!!』

玉の輿って……

「私は、別に玉の輿を狙っている訳じゃあ……」

『あんた。再就職を決めてもまだ
課長に未練があるわけ!?いい機会じゃない。
課長のことは、ささっと忘れて
新しい恋に行きなさいよ。阿部さんいい男じゃない』

それは、分かっている。

阿部さんは……私には、勿体ないぐらいに
優しくて素敵な人だ。
それにあんなに魅力的な人は、これからも
現れるか分からないだろう。

「分かってはいるんだけど……なんて言うか
ずっと課長のことを想っていたから
今さらどうやって向き合ったらいいか
分からなくて……。
たくさん相談とか乗ってもらったし……恥ずかしいと言うか」
ゴニョゴニョと恥ずかしそうに言うと

『あんたは、純愛乙女か!!』
そうツッコまれた。

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