恋愛と失恋の果てに。

勇気を出して車から降りた。
そして、久しぶりに会社の中に入った。

心臓が飛び出すぐらいドキドキしていた。
怖い……震えるような怖さが私を襲ってくる。
今さら来たことを皆……どう思うだろうか?

立ちくらみをして立ち止まろうとしたら
阿部さんは、私の手を引いて歩き出してくれた。
ドキッと心臓が高鳴る。

すると周りがよく見えるようになる。
周りは、私よりどちらかと言うと
阿部さんを見ていた。
女性社員達は、頬を赤くしているじゃないか。

そこでハッとする。
そう言えば……阿部さんは、カッコいいんだったわ。
会社に居たら女性社員が騒ぐだろうなぁ~と自分も
思っていたくせに、色々と有り過ぎて忘れていた。

エレベーターまで着くと阿部さんが
「千奈美さんの部署は、何階?」と聞いてくる。

「あ、15階です。
15階のCM営業企画部です」

「15階か……えっとー」
エレベーターが来るとボタンを押してくれる。
その際もずっと手を握っててくれた。

もうどっちにドキドキしているのか
分からなくなってくる。
エレベーターの中は、人混みで距離も近いし。

そして、降りてすぐに見えるのが……
久しぶりに見るCM営業企画部だった。 

懐かしさより
恐怖で動悸が激しくなっていた。
中に入ろうとするにも震えて前に進めない。

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