恋愛と失恋の果てに。

そ、そんな挑発的な態度をとったら……
私は、内心ヒヤヒヤしていた。

課長は、眉を寄せたまま阿部さんを睨み付ける。
「ずいぶんと……若い取締役ですね?」

「えぇよく言われます。
父の会社なので、いずれ俺がそこを継ぎますが
まだまだ若輩者ですよ」
ニコニコしながらそう答える阿部さん。

何だか火花が飛びそうな雰囲気だ。

「そんな人が……何故尾野と一緒に?
もしかして……一身上の都合って……!?」

「いえ、結婚じゃありませんよ。
俺は、彼女を引き抜いたいと思っていますが」

寿退社だと思った課長に対して
私を引き抜きたいと言い返す阿部さん。

「引き抜きたいだと……!?」
さらに眉を寄せて阿部さんを睨み付ける。
それに対して余計肩をビクつかせる私。

「すでに彼女は、我が社との契約を
済ませてあります。
今回は、上司として彼女に付き添っただけです。
なので早めに退職届を受理して頂きたい。
元上司の最後の役目として」

阿部さん……!?

彼の挑発的な態度に驚いてしまう。
普段の穏やかな彼とは違う。

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