恋愛と失恋の果てに。

その態度にちょっとムッとした。
私だって嫌だ。こんな人の担当になるの……。

「そう言うことだから
千奈美さん。弟をよろしくお願いしますね」
ニコッと笑顔で言う希美さん。

その笑顔は、文句を言わせないと言わんばかりの圧力をかけられ何も言い返せなかった。
希美さんって……怒らすと怖い人だろうか?

ビクビクしていると阿部さんは、
「希美姉さん。いくらなんでも……」

「これは、社長命令でもあるのよ?
彼女が我が社の社員として働く以上は、我が社の
ルールには、従ってもらうわ。いいわね?
あなた達」

「…………。」
悔しそうな表情をする阿部さん。

私は、何だか不安になってくる。
阿部さんと同じ会社なら心強いと思ったが
離れ離れの上に弟さんの担当マネージャーだなんて
上手くやれる自信なんてないよ……。

結局。私は、ケイトの担当マネージャーとして
働くことになった。
まずは、モデルの撮影場所に行くことになったのだが
「千奈美さんってさ、車の免許持ってるの?」

「えっ?いいえ……持ってませんが……」
実は、免許なんて持っていなかった。普段の通勤は、
電車を利用している。

するとハァッ……と溜め息を吐かれる。
「免許ぐらい持っててよ。俺が運転するのか……
事務所の車だと親父や希美姉に知られるから
使いたくないんだよな」
ブツブツと文句を言われた。

必要ないと思って取らなかったけど
今回ばかりは、本当に取らなくて良かったと思えた。

「すみません……」
何で謝らないといけないのか分からなかったけど

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