恋愛と失恋の果てに。
あっ……返事を返してくれた!?
私は、その動作を見て恵斗さんは、本当は
悪い人じゃないような気がした。
本当に嫌な人だったら私を助けてくれないし
もし助けてくれても目覚めるまで
付き添ってくれないだろう。
もしかして意地悪するには、理由があるのだろうか?
恵斗さんが出ていくと阿部さんは、
ハァッ……と溜め息を吐きながら
「まったく……アイツは、今だに反抗的な態度で
困ったもんだな。根は、いい子なんだが」
愚痴を溢してきた。
「あの……恵斗さんは、普段から
あんな感じなんですか?」
私は、気になり尋ねてみる。
「うん。まぁ……仕方がないんだけどね。
アイツは、末っ子だから甘えられてワガママに
育ってしまった。
その割には、コンプレックスの塊みたいな奴だし」
コンプレックスの塊……?
あんな自信満々で輝いているのに。
「そうには、見えませんが……?
むしろ自信に溢れていると言うか……」
コンプレックスの真逆の人生を歩んできたように
思えて仕方がない。
すれと私の方を見てクスッと苦笑いする阿部さん。
「アイツはさ……小さい頃から俺ら兄弟と
比べられながら過ごしてきたんだよね。
上の希美姉さんは、完璧なほどの優等生だったし
香織姉さんは、かなり自由奔放な人だけど
優秀で人望も厚かった」
「俺は、まぁ昔から跡継ぎとしての期待も
されていたし。逆にそれが恵斗にとったら
コンプレックスになっちゃったみたいでさ。
期待も優秀でもない……自分。
そうしている内に変に意地を張っちゃったみたいで」
ハハッと笑うが悲しそうな表情をしていた。
私は、それを聞いたとき
恵斗さんの気持ちが何となく分かったような気がした。