恋愛と失恋の果てに。

そうしたら恵斗さんは、自分の背負っていた
リュックから何かを取り出していた。
気になりチラッと見ていると台本らしき物を
私に差し出してくる。

えっ……?

「今日のドラマの台本。一応目を通しておいて」

「は、はい。」
私は、その台本を慌てて受け取った。
どうして渡してくれたのか分からないけど
マネージャーとしてなら嬉しい。

えっと……確か主人公が勤めている高校の
不良生徒役だったかしら?
どんなドラマだろうと台本を見たら一瞬。
目の前が真っ暗になりそうになった。

この作品は……
天宮麻梨子が出演するって話題になっているドラマだった。
ってことは、ここに彼女が来ているってこと!?

そう思ったら動悸が激しくなってくる。
ど、どうしょう……今は、会いたくない。
課長の元奥さんなのに……。

台本が持っている手がガタガタと震え上がる。
落ち着こうとするのだが震えが止まらない。

「あんた……大丈夫か?顔色が真っ青だぞ?」

「だ、大丈夫です。
ちょっと話題のドラマだから緊張しちゃって……」
必死に笑って誤魔化すが、胸が苦しくて
仕方がなかった。

落ち着け……落ち着くのよ。
あまりの衝撃でめまいがしそうだった。

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