恋愛と失恋の果てに。

「どうなの陸斗の様子は?」

「分かりません。酷く怪我をしていて
意識がない様子でした。どうしょう……阿部さんに
何か遭ったら」
私は、不安で涙が溢れてくる。

「大丈夫よ。陸斗は、無事だから 
そう信じましょう」
不安がっている私を励ましてくれる希美さん。

しばらくして阿部さんのご両親と
遅れて恵斗さんも駆けつけてくれた。
手術は、長い時間行われた。

「……はい。飲み物」
少し離れた場所に1人で座っていると恵斗さんは、
私に冷たい飲み物を差し出してくれた。

「……ありがとうございます」
涙をハンカチで拭い飲み物を受け取る。

飲み物を受け取ると頬につける。
冷たくて……気持ちがいい。

恵斗さんは、黙って私の隣に座る。

あれから1人で考え込んでいた。
思い出すのは、阿部さんの顔ばかり。
優しい笑顔に悲しそうな表情。
どれも私に向けられたものだった。

彼は、ずっと私を見てくれていた。

課長が好きだと言っても変わらずに
そばに居てくれたのに……私は、阿部さんに
何もしてあげられなかった。
傷つけてばかりだった。

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