恋愛と失恋の果てに。
そして、こうも言ってくれた。
「阿部さんのことが好きだと自覚したのなら
何度も好きだと呼びかけてみたら?
そうしたら何か反応があるかも知れないわよ?」
「毎日話しかけている内に
反応をしてくれたって言う話を何処かで
聞いたことがあるわ。
千奈美の声なら届くかもしれないわよ」
私の声が……阿部さんに届いたら
本当に目を覚ましてくれるだろうか?
そうしたら
また私を見て笑いかけてくれるだろうか?
あの温かい笑顔で……
さゆりの言葉に励まされて
私は、阿部さんが入院している病室に
何度も足を運んだ。
恵斗さんのマネージャーの仕事は、
変わらずに続けている。
だが恵斗さんの気持ちには、応えられないと伝えた。
けじめをつけたいから
恵斗さんは、
「からかっただけだから真に受けるな。アホ」
そう言われたが本当は、私のために
嘘をついてくれたことは、今なら
理解しているつもりだ。
ツンデレで素直じゃないけど
本当は、優しい人。
気持ちには、応えられなかったけど……
彼の想いは、本物だった。
ありがとう……。
そして数ヵ月後。
私は、いつもの通りに阿部さんの病室に訪れた。
朝早くに病室に寄ってからスタジオに向かい
恵斗さんと合流する。配慮してくれたお陰だ。
「おはようございます。
今日は、阿部さんのために綺麗な花を
持ってきたんですよ。花瓶に生けますね」
眠っている阿部さんに声をかけ花瓶を準備しようとした。