恋愛と失恋の果てに。
「うん。早く仕事復帰したいな。
もう身体が鈍っちゃって」
フフッと苦笑いする阿部さん。
彼の笑顔を見るとやっぱり
ホッとする。
私は、ずっとこの笑顔に助けられた。
「千奈美さん」
「は、はい。なんでしょうか?」
私の名前を呼んできたので慌てて返事をする。
すると阿部さんが徐に語りだした。
「俺さ…散歩するのが好きなんだ。
普段見えない景色とか見たくて、たまに車を使わなかったり
近くまで停めてもらって歩いて移動したりする。
そうしたら不思議なことに
何回か千奈美さんと会うことが出来た」
「ただの偶然かも知れないけど
俺にとったら運命に思えてならなかった。
お見合いの日もそうであったように……」
私は、それを聞いて納得した。
阿部さんに何故か遭遇する確率が高かったのは、
そんな理由があったからだったのだ。
確かに運命的なものかもしれない。
あの時……お見合いの日に彼に出会わなければ
こんなにも阿部さんのことを知ることも出来ずに終わっていた。
無意識でもお互いに結びつけたのかもしれない。
「俺は、あの時からずっと変わらずに君を見てきた。
願えば……君もそうであってほしいと想っている。
好きだ……千奈美。何度でも言うよ。
俺と結婚してほしい」
真っ直ぐと私を見てプロポーズをしてくれた。
変わらずに私を見てくれていた。
涙が出るぐらい嬉しかった。
「はい。よろしく……お願いします」
もう応えに迷いはなかった。
私も阿部さんのことが好きだったから
「ありがとう」と笑う彼の笑顔は、
私にとったら何よりの薬だった。
どんな薬よりも効果がある素敵な薬だ。
私達は、抱き締め合う。
そして確かめるようにkissをしたのだった。