恋愛と失恋の果てに。
そっか……旅行に行きたかったんだろうな。
「梨々花は、仕事が忙しい母親と久しぶりに
旅行に行けると張り切っていたのだが
仕事でダメになって落ち込んでいたからな。
父親として……何かしてやりたいんだ」
寂しそうに溜め息を吐く課長。
課長……。
本当に娘さん想いだな。
娘さんを想う時の課長は、寂しそうだけど優しい。
会社と違う……顔だ。
心臓がドキッと高鳴った。
でも、そんな想いは、私にじゃない。
私が誘ってもいいのだろうか?
ポケットに入っているチケットに触れる。
「あ、あの……これ友人に頂いたんですけど
娘さん……梨々花ちゃんと一緒に行ってください」
水族館の無料招待のチケットを課長に差し出した。
課長は、そのチケットを見る。
「この水族館は、梨々花も好きでよく
子供の頃に連れて行ったが……でも本当にいいのか?」
「はい。私も予定が入っていて
その日は、行けないんです。無駄にするなら
ぜひ梨々花ちゃんと楽しんで下さい」
ニコッと笑顔で伝えた。
私じゃあ、課長にそんな笑顔を出せない。
それに父親としての立場もあるし……。
何より梨々花ちゃんのために。