恋愛と失恋の果てに。
「えっ?」
別に人がいい訳ではないと思うが……?
『千奈美は、娘さんに気を遣ってるみたいだけど
もう別れて母親の方に引き取られたんでしょ?
だったら恋愛しても問題ないんだし、
別にまだ付き合っている訳じゃないのだから
そこまで気を遣う必要なんてないでしょ!?』
さゆりにそう言われる。
気を遣う必要がない。
確かにそうなのかも知れないけど……
でも梨々花ちゃんにとったら1人きりの父親だ。
そして課長にとっても。
「そうなのかも知れないけど……梨々花ちゃんは、
楽しみにしていたお母さんとの旅行を
仕事でキャンセルされたんだよ?
その上に……お父さんは、他の女性とデートって
嫌じゃない?」
私は、そう告げる。
私だったら嫌だ。
お母さんが、仕事でなかなか一緒にいれなくて寂しいのにその上、お父さんまで
自分より違う人を選ぶなんて辛い。
悲しいだけだ……。
『千奈美……』
「それに。私は、課長を笑顔に出来ない。
笑う時は、いつも娘の梨々花ちゃんのことを
考えている時だけだったし」
でも私にそれを奪う権利はない。
「ごめんね……さゆり。
気持ちは、ありがたく貰っておくから」
悲しいけど、これでいいのだ。