恋愛と失恋の果てに。

阿部さんの言葉に驚いた課長だったが
フッと笑う。

「そうか……やはり君には、彼のような男が
似合うな。良かったじゃないか。上手くいって」

か、課長……!?
私は、課長の言葉にショックを受ける。

良かったって……いいの?
私が、阿部さんと付き合っても?

迫って断られ
そのあげく課長に阿部さんとの仲を良かったと
片付けられた。つまり……完全にフラれた。
ショックのあまり涙が溢れて止まらない。

すると阿部さんは、それに気づいたのか
私の顔を隠すように抱き締めると
「彼女のことなら俺に任せて下さい。
行こう……千奈美さん」
そのまま私を連れ出される。

頭が真っ白になりボー然としたまま
もう何も考えられなかった。
その際、課長の表情がよく分からなかった。

阿部さんの住んでいるマンションの中に
入るとエレベーターに乗り込んだ。
するとギュッと私を抱き締めてくる阿部さん。

「もしかして……あの人のことが好きなのか?
千奈美さん」
苦しそうにそう尋ねてくる。

そう……好きだったの。
こっぴどくフラれたけど……

「フラれたの……課長に……」
泣きながら必死に告げる。
阿部さんにそんなことを言っても困らすだけなのに。

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