恋愛と失恋の果てに。

阿部さんは、
「心配しなくても運んだだけで手を出してないよ。
さすがに君の意思を無視するなんて
自分勝手な行動は、慎んでいるからね」
クスクスと笑われる。

あっ、しまった!!
これだとただの自意識過剰じゃない。
いくら男性だからって露骨に疑ってしまうなんて
自分が恥ずかしくなってくる。

「すみません……」

「でも、ショックだな。
あからさまに何も無かったことに安心するんだもん。
内心傷つくよね……それって」

えっ!?

「あ、あの。けしてそう言う意味じゃあ……」
阿部さんの言葉にオロオロしてしまう。
別に傷つけるつもりはなかった。

そうしたら、さらに笑われた。
「冗談だよ。冗談。
女性なら気にするのは、当たり前だからね。
起きるならシャワー浴びておいで。寝汗かいちゃっただろ?
バスタオル好きに使っていいから。
俺は、その間に朝食を作っちゃうからさ」
笑いながら言うと部屋から出て行ってしまう。

私は、唖然とする。
もしかして気持ちを楽にさせるために
わざとからかってきたのだろうか?

だとしたら……阿部さんは、
本当に優しい人だわ。

人の家のシャワーを使うのは、抵抗があったが
寝汗をかいていて洗い流したかったので
使わしてもらうことにした。
サッパリすると少しは、気持ちが楽になった。

いや、なったのかも知れない程度だけど。

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