恋愛と失恋の果てに。
「は、はい。実は……」
バレてしまったのなら仕方がない。
私は、事情を話した。
離婚や娘さんが居ること。
好きになったけど……でも失恋したことなどを。
こんなに話したのは、さゆり以来初めてだった。
「す、すみません。調子に乗って話し過ぎました。
こんなこと話されても迷惑ですよね」
「いや。全然迷惑だなんて思ってないよ!
むしろ失礼だけど……俺に話してくれて嬉しかった」
ニコッと嬉しそうに微笑む阿部さん。
「阿部さん……」
阿部さんにとったら面白くない話なのに
それでも嫌な顔をせずに聞いてくれる。
どうして……?
「まさか、そんな複雑な関係だと思わなかった。
辛かったね。本当は、受け入れて欲しかったよな」
どうして、そんな風に優しいことを
言ってくれるの?
「あ、阿部さんは、どうして
私の話を聞いてくれるんですか?
面白くないどころか……呆れたり、嫌な気持ちに
なったりしませんか?」
どうしてこんな質問をしたか自分でも
分からない。
ただ行き場のない思いを誰かに
ぶつけたいのかも知れない。
すると
「誰にだって……辛い恋を1つや2つしてるだろう。
だからって好きな人の恋をしてきたことを否定するのは、おかしいし俺も人のことは、言えない。
俺は、千奈美さんのことが好きだから
君の全てを受け入れたい」
「課長さんが好きだったことも……全て。
なーんて。ちょっとカッコつけ過ぎたかな?
本当は、ちょっと課長さんに嫉妬してる。
君にそんなに好きになってもらえたなんて
羨ましい限りだ」
苦笑いしながら言う阿部さん。