恋愛と失恋の果てに。
「そう……あなたが、あの尾野さんなのね」
ボソッと聞こえるか聞こえないかぐらいの
小さな声で言われる。
えっ?
頭を上げて天宮麻梨子を見ると
ニコッと微笑んできた。
女の私でもドキッとするぐらい綺麗だったが
今のは、気のせい……?
「こちらこそ。はじめまして
天宮麻梨子です。
話は、景……佐々木から聞いています。
お会い出来て嬉しいわ」
そう言い私に手を差し出してきた。
「は、はい。こちらこそ
出演して頂いて嬉しい限りです。
応援してます。頑張って下さい」
嬉しさのあまり興奮しながら握手をした。
「フフッ……お互いに頑張りましょう」
ニコッと微笑むと言ってしまう。
お互いに……?
彼女の言葉に引っかかったが
改めて素敵な人だなぁ……と思った。
「課長。天宮さんって本当に綺麗な……」
嬉しさのあまり課長に話しかけようしたが
それ以上何も言えなかった。
課長がとても切なそうに彼女を見ていたからだ。
まるで切ない恋をしているようなそんな表情……。
胸の奥がざわつく。
撮影を見ながらぼんやりと考えていた。
あんな顔……私の時とは、また違う。
同じ悲しい表情だったけど
天宮麻梨子の時は、もっと愛情を感じた。
まるで……梨々花ちゃんを見ているような……あれ?