弱虫男子
握り締めたかばんの持ち手には


見慣れたヘアゴムが

結び付けられていた。



俺は一度、キツク目をつむる。



ゆっくり開いてみても

俺の世界はなんにも変わっていない。


彼女への気持ちも

今さら変わるはずはない。




「明日はさ、

ファミレスもカラオケもやめよう。」



何か聞きたそうに

向けられたほっぺたが

真っ白で



俺は思わず息をのむ。




「俺は茶化さないから、

君もDVDは借りずにおいで。」




俺は相変わらず笑っている彼女の手を

音がするくらい強く握った。
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