弱虫男子
「え?」


俺が映画に意識を向けようと

頑張り始めた頃、


彼女が何かを口ずさんだ。



これまで一度も

聴いたことない歌だった。



なんか、彼女の心の中で

流れていたのが

口から漏れたって感じ?



俺はちょっと特別な存在に

なれたような気がして

嬉しくなってしまう。




彼女の日記を

こっそり覗くような

気持ちで


「何て歌?」


と聞いてみた。



数秒の沈黙の後



「忘れちゃった。」


と彼女は短く答えた。

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