弱虫男子
携帯のバイブに反応した彼女の顔が


一瞬くもる。


俺は彼女の表情の変化には

気がつかなかったことにした。



彼女と俺は、よく似ている。



空気を壊したくない。

盛り下げたくない。

期待を裏切りたくない。


そうだろ?



彼女が受話器を上げた途端、

俺は電話口に向かって叫んだ。



「好き!大好き!」
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