長い一日が私の短い一生。
1章**
「おはよ !!」
当たり前のように学校の廊下で話しかけられる。
「おはよ -」
自分なりの 普通 で返してみるけれど,私はいま挨拶をしてくれたこの人の事を 知らない。
「今日の午後授業班ごとに目標とかきめるんだって !!」
「へぇ,そうなんだ」
適当に返してみる。
「へぇ、そうなんだって,昨日先生言ってたじゃん !!」
「そうだったね,」
そうだったね,なんて返すけれど,私は昨日の先生の話も,午後授業の内容も知らない。
話を聞いてなかった訳ではない。
私は 昨日 の記憶が無いのだ。
今にはじまった事じゃない。私は昔のことは知らないけど,家にあった日記に書いてあった。最初は信じてなかったけれど,私は確かに昨日の記憶が無い。
そのせいか,友達もいないし,恋人なんていたことさえないと思う。けれど別に記憶が戻って欲しいとか思わない。別にこのままでいい。
いつも不便だけど一番不便なのは大晦日の時0時になると起きてても記憶なくなることくらい。
「今日は,体育祭で何に出るか決めたいと思いま-す」
午前の授業。
面倒くさそうに学級委員が前で話を進める。学級委員は2人いるらしく,男女で毎学期決めているらしい。
体育祭なんて,今日居なくなる私には関係の無いことだ。けど明日いるかどうかわからない私には関係あることだから,決めておかないと。