長い一日が私の短い一生。
2章**
午後の授業もあっという間に終わり,もうすぐ1日が終了する。
「ねぇ,茉知-」
香里が私を呼び止める。
「どうしたの ?」
「なんかいつもこの時間帯になるとかなしそうな顔するなぁ、って」
かなしそうな顔してたんだ。と気付かされる。
「ううん,なんでもないよ?じゃあ,帰るね,また明日」
また明日なんて言うけど,明日香里があうのは今日の私なんかじゃない。
「そう?じゃあ,ばいばい !!また明日!!」
そう言って,香里と別れる。
すぐ学校を出るのも名残惜しいな。と思い、校舎を回ることにした。
「音楽室,入ったことあるんだろうけどないな。」
ひとり言を言って音楽室のドアを開ける。
「え,。」
誰もいないと思っていた音楽室には,窓から差し込む夕日に照らされ,金色の髪が綺麗に輝いていて,思わず見とれてしまうほど綺麗な人がいた。
「古谷, 茜 くん ?」
その人物の名前だと思われるものを恐る恐る呼んでみる。
不意に耳から付けていたイヤホンを外し,こちらに振り向く。
「あ,古川さんじゃん」
と言って,優しく微笑む彼は綺麗だった。
「なに?こんな時間に音楽室なんてどしたの?」
「古谷くんこそ,どうしたんですか?」
焦って,思わず聞き返してしまう。
「え?俺?音楽聴いてた ,」
「どうして音楽室で?」
「なんかさ,落ち着くじゃん?んで,古川さんはなんで?」
聞き返されて,なんて返そうと悩んだ。
「色々ありまして,」
「へ-,そうなんだ」
色々あると言った私に聞き返さないのは古谷くんなりの優しさだと思った。
「じゃあさ,」
不意に言われ驚く。
「なんでそんなかなしそうな顔してる訳?」
質問の内容に驚きを隠せない。
「わ,私,かなしそうな顔してますか?」
「うん,なんでそんな顔してんの?」
私は記憶の事は家族にしか知られてない。
それに古谷くんだって,急に目の前の人が 1日で記憶がなくなるんです なんて言われて信じれる訳ない。
「なんでもないですよ,」
そう言って自分なりに微笑んでみる。
「嘘」
そう言ってふわりと抱き締められた。
急なことに頭が追いつかない。
「え,古谷, くん ?」
「茜でいい,」
「茜,くん?急になんですか ?」
流石に頭が追いついて来て,すごい状況だな。と思った。
この状態でも,茜くんいい香りだな,柔軟剤何使ってるのかな,なんて考えてる私はどれだけマイペ-スなのだろう。
「どうしてさ,なんでいつもかなしそうにしてんの」
不意にきかれた質問だった。
いつも私かなしそうにしてるのか,なんて新しくわかったことも。
「別になんでもないですよ?」
嘘だ。
自分でもだんだん声がかすれていっていることが分かる。
「言えよ,」
そう言われて焦る。