大切なきみへ
(奏side)
「三浦くん」
「ん?」
「明日ほんとに応援してる」
はい、とタオルを渡してきた
三浦奏って刺繍が入ってる
「…久下が縫ったの?」
「ごめんあんまり上手じゃないでしょ」
ちょっと困ったようにふふっと笑う
違うそうじゃなくて
「手、もう大丈夫?」
「え?」
腕を持ってパーカーをまくると、だいぶ薄くなった傷跡が白い腕にあった
林さんにつけられた跡
「は〜、良かっただいぶ良くなったんだ
大丈夫、明日勝つから」
少し驚いた顔をしていた久下はすぐ笑顔になった
「うん、帰ろ!」
「大丈夫だよ、すっごい頑張ってたもん練習」
「どうしたの急に」
「ちょっと険しい顔してたから
あれ?してなかった?」
そりゃー
「雨降ってるからね」
「雨嫌いだね」
うん、嫌い
「はーなんで雨なんか降るかな」
盛大に溜息をつく俺の隣はにこにこしながら
「私曇りが好きだな〜」
「聞いてないよ」
まあ知らなかったことが一つ知れて嬉しいんだけど