夏を殺したクラムボン
「なんでみんな、葉月だと思うわけ?」
「え?」
浜田はやや戸惑い、口元に手を当てた。
「だって……さ。変じゃん、あいつ。ちょっと前までアレだったし」
「そうかな」
二人は揃って右側で本を読む周を見た。周は浜田の言う通り、確かに学年では孤立しているように見える。
……でも、葉月は一人でも平気そうなのに。
成海は浜田の机に肘を乗せた。
「誰かが見たらしいんだよ」
浜田はリュックから次の授業の準備物を取り出しつつ、成海だけに聞こえる声で喋り続けた。
「あいつが、雨の中で猫を殺してるとこ。俺らが見た猫を殺ったの、葉月かもよ」
……雨?
あの猫を見つけたのは、雨の日だったか?
単語に引っかかった成海は浜田に問い尋ねようとするが、思いとどまり止めた。
「しかもあいつ、親いねえって言うし。明日から犯人探そうぜ。今日は俺、塾あるし」
「……何時に終わるんだ?」
「九時半くらい。俺バカだから」
浜田がにっと無邪気に笑う。
ふと、成海が視線を感じ横を向くと、周がこちらを見ていた。
彼女は成海と目が合った瞬間、
穏やかに微笑し、前を向いた。
「……」
成海は目を瞑る。
――
浜田 優一の訃報が学校中に轟いたのは、
翌日のことだった。