夏を殺したクラムボン
窪田のこめかみが動く。
「……全員にばらすのか?」
「……別に。僕はばらそうがばらすまいが、どっちだっていい」
口元に手を当て、脳を働かせる。
……ばらしたところで全てが窪田のせいになるくらいなら、ばらさず放っておけばいい。でも、そのせいで全てが葉月のせいにされてしまったら。
僕は、どうしたらいい。
「……ばらされたくないなら、条件がある」
「条件?」
顰蹙し、窪田は次の言葉を待つ。成海は額を伝う汗を拭い、鋭く前を見据えた。
「……条件は、僕が全ての犯人だと、4組の全員に広めること」
「……は!?なに言ってんのお前?」
窪田は面食らったように大声を出し、目を見えて動揺し始める。
成海は雑草を踏み、窪田の前に立った。
「どういうことだよ!何がしてえんだよお前、意味わかんねえ」
「どうする?」
視線が交差する。蝉の歌がさんざめき、脳を侵食していく。重なる、2つの濃い影。
惑乱する少年。
公園の端で、白い百合の花が揺らめく――。
「……わかった」
窪田は目線を逸らし、言った。
「何考えてるかも知らねえけど、俺には……選択権なんかない」
「あぁ、そうだよ。それと……窪田に1つ言っておく。葉月には言うから。このこと」
無言で踵を返し、窪田は歩き出した。
ひとりになった成海はざらついた空気を吸い、公園内を見回す。植えられた木の幹に、何匹もの蝉が張り付いている。
……これでいいんだ。
成海はひそやかに笑った。