食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
姫との出会い
香さんを初めて見たのは、開発部の新人研修が終わってすぐに『営業にこれ届けて来て』と使いに出されたときだった。
事務職の子に『誰か探してますか?』と声をかけられ、『広瀬さんを』と答えた瞬間、営業フロアに響き渡るおっさんの怒鳴り声が聞こえた。
「ここは開発じゃないって言ってんだろ。営業だったらお客第一に考えろ」
迫力あるなぁ。怒られてるの、女の子か。
「お客様のことを考えるのと、なんでも言うことを聞くのは違うんじゃないかって言ってるんですけど」
後ろ姿は小さいけど、勝気だな。迫力に負けてない。
「そのお客が納得しないんだよ、これじゃ。ろくな説明もできないくせに偉そうなこと言ってる場合か」
ああ、やり込められてうつむいた。大丈夫か。
「香ちゃん、もう一回練り直そうか」
もう少し若い人からフォローが入ってる。
「はい。すみません、広瀬さん」
いきなりしおらしくなって、振り返ってこっちに来る。
へえ、きれいな子じゃん、香ちゃん。25歳ぐらいかな。こういう人もいるんだな、この会社。
『あれが広瀬さん』とさっき声かけてくれた女の子が指をさす。
「新人くん?開発?」
「はい、平内です。よろしくお願いします」
とりあえず愛想よく答えて、広瀬さんの席まで行った。
「すごい迫力でしたね、さっきの」
届け物して伝言を伝えた後、言ってみる。
「ああ、川井さん? 香ちゃんに期待してるんだと思うんだけどねえ、相性悪いっていうか、なんか上手くいってなくてね」
「意外と強かったですね、あの人」
「きれいな子だろ。平内くん、イケメンだかなんだか知らないけど、社内で変な気起こすなよ、小さい会社なんだから」
「そんなんじゃないですよ」
さすがに苦笑する。初対面でこの扱いか、ひどいな。
社内で手なんか出さないよ。面倒だよ、揉めたら。
気が強い子も嫌いじゃないけど。
事務職の子に『誰か探してますか?』と声をかけられ、『広瀬さんを』と答えた瞬間、営業フロアに響き渡るおっさんの怒鳴り声が聞こえた。
「ここは開発じゃないって言ってんだろ。営業だったらお客第一に考えろ」
迫力あるなぁ。怒られてるの、女の子か。
「お客様のことを考えるのと、なんでも言うことを聞くのは違うんじゃないかって言ってるんですけど」
後ろ姿は小さいけど、勝気だな。迫力に負けてない。
「そのお客が納得しないんだよ、これじゃ。ろくな説明もできないくせに偉そうなこと言ってる場合か」
ああ、やり込められてうつむいた。大丈夫か。
「香ちゃん、もう一回練り直そうか」
もう少し若い人からフォローが入ってる。
「はい。すみません、広瀬さん」
いきなりしおらしくなって、振り返ってこっちに来る。
へえ、きれいな子じゃん、香ちゃん。25歳ぐらいかな。こういう人もいるんだな、この会社。
『あれが広瀬さん』とさっき声かけてくれた女の子が指をさす。
「新人くん?開発?」
「はい、平内です。よろしくお願いします」
とりあえず愛想よく答えて、広瀬さんの席まで行った。
「すごい迫力でしたね、さっきの」
届け物して伝言を伝えた後、言ってみる。
「ああ、川井さん? 香ちゃんに期待してるんだと思うんだけどねえ、相性悪いっていうか、なんか上手くいってなくてね」
「意外と強かったですね、あの人」
「きれいな子だろ。平内くん、イケメンだかなんだか知らないけど、社内で変な気起こすなよ、小さい会社なんだから」
「そんなんじゃないですよ」
さすがに苦笑する。初対面でこの扱いか、ひどいな。
社内で手なんか出さないよ。面倒だよ、揉めたら。
気が強い子も嫌いじゃないけど。
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