食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
「平内、お前迎え行ってきて」

武田さんに言われた。ちらっと目をやると、俺は絶対に行かねえって顔してる。相当ムカついてるな。

しかたない。

女の子を席から呼んでくるとか慣れてるからいいけどさ、香さんもああいう感じで囲まれてんのか。




「あ」

迎えに行ったら、香さんが気づいた。メガネくんに隣を守られた形で、掘りごたつ席に正座で座ってる。

男達が一斉にこっちを見て、なんとも言えない顔をする。


見た目だけで負け認めてどうすんだよと思うけど、まぁ世の中そんなもんだ。メスに選ばれるオスが強いってことだろ。

別にケンカになっても負けないけどね。この面子でそういうことは起きなそうだな。




「香さん、呼んでるよ」

「ごめん、戻るね、またね」

笑顔で立ち上がりながら、さっきと同じようなさっぱりした挨拶をしてる。男達も引き止めることなく嬉しそうに見上げて挨拶した。

確かに姫だな、この扱い。店の女の子とは違うよな、当たり前だけど。

「姫、お疲れ」

「高木くんも」

無表情で片手をあげたメガネくんだけは、対等な感じだ。

武田さんのポジションだよな、つまり。これはムカつくだろ。
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