食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
香さんは、営業から開発に出戻って来てる。チーム横断で細かい仕事をしてるから、たまに一緒に仕事をする。
丁寧な仕事をするけど、ダメなものはダメだと一刀両断することもあり、まあ性格そのまんまだ。
何かこだわりがあるらしいが、俺にはどうこだわってるのかよくわからない。でも仕事がしやすくなってる。
「こだわり? なんだろ。香さん細かくてうるさいんだけど、ちゃんとやると嬉しそうにしてるからね、つい頑張っちゃうよなあ」
と小林は言う。新人の三上も乗ってくる。
「遅くまでいると、頑張ってるねってチョコとかもらえるんですよね。オレ気に入られてるのかなって」
「お前それ、ガキ扱いだよ」
話が逸れてきた。
つまりあれか。喜ばせようと思ってみんながしっかりやるようになったって感じか。
それでいいのか?
「そういえば、こないだ姫って呼んだら、真顔で怒られちゃいましたよ」
「バカか三上。本人に言うなよ」
「ちゃんと教えてくださいよ、そういうの。せっかくかわいがられてたのに」
姫ってあだ名は、裏では定着してる。本人は頑なに嫌がってるのがまた面白がられてる。
なんていうか、全体的に要領が悪いんだ、あの人。