食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
奥の座敷で飲んでると、3つ上の武田さんが女の子を連れてきた。
営業の香ちゃんだ。あれ以来見かけてなかったな。
「おー、香ちゃん。営業どう?」
先輩から声がかかる。
「聞かないでください。どうもこうもない感じだから」
香ちゃんが、そむけた顔の前に指先を揃えた手をかざして答えた。きれいに見える動きを知ってるな。
「香、お前最近来てないから開発の新人会ってないだろ。こいつら、平内と小林」
武田さんが紹介する。なんだろ、同期?彼女?
「そうだね初めて。私は見たことあるけど。4年目の米沢香です。こんばんは、平内くん、小林くん」
「こんばんはー、よろしくお願いします」
小林と挨拶しながら、なんだこれキャバ嬢か?と思う。
笑顔で名乗って、名前呼んで、目を合わせる。
この基本動作をきっちりできる子は伸びる。
こないだ営業で見たのと随分印象が違う。
「他の子は?女子いるって言ってたよね」
「付き合い悪いんですよ、あの子」
沢田さんが言う。残念そうだ、女の子好きだからな。
「うそ。女子と喋りに来たのに。まあいいや。沢田、勝ち続けてるって聞いたよ?」
「そうなんですよ、リーグ昇格かもしれなくてですね。俺的にはもうちょっと戦術面の強化をしないとと思ってて」
沢田さんが語り始めた。フットサルの草チームに入ってるって言ってたな。
この子、そのまま楽しそうに聞き役に回ってるところは接客できそうなんだけど、ちょっと違うな。
なんか偉そうだからか。
「沢田、声大きいよ」とかはっきりものを言う。そのうち、もう無理、と耳を押さえて隣のテーブルに移って行った。
ワガママだな。感じ悪くならないところが素質ありそうではある。
割と余裕のあるおっさんにつければかわいがられるかなーとか考えて、ダメだ、女の子見る目が完全に仕事だな、と反省した。