食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
戻ってきたら、やっぱりまだ1人でいる。スーパーボールが水の上をぐるぐる流れるのをじっと見てる。

幼稚園児? 待たされてるのか? でも最初から1人で来た気がするな、さっき。



「なあ。誰か待ってんの?」

しゃがんで声を掛けると、怪訝な声で答える。

「だれ?」

「俺、香さんの友達。さっき一緒にいただろ」

「香ちゃんまってるんだけど、こないんだよ」

「さっきのとこ戻るなら連れてくぞ」

「しらないひとについてっちゃだめなんだよ」

「じゃ、香ちゃんに電話するか」

言いながら、我ながら面倒くさいことに首突っ込んだとうんざりした。




香さんは1コールで電話に出た。

「香さん?男の子確保したよ」

息を飲む音が聞こえた。探してたか、さすがに。

「子供ほっといてなにやってんの」

追い込んでどうすると思うけど、イラついてるのは隠せない。




子供を電話に出して安心させて、待ち合わせを決めた。健太というそのガキを連れてこうとすると、「スーパーボールやりたい」と言う。

1回やらせたら、今度はおなかへっただと。

元気なガキだな。さっきの店に連れてく。

「この子、ちょっと食べさせといて。保護者連れてくる」

「おーいいよ。焼き鳥食うか?」

「たべる!」

「香ちゃん連れてくるからちょっとここにいろよ、健太」

「わかったー」
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