食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
社務所に行って待ってたら、すぐきた。やたらに恐縮してる。当然だよな。人混みで見失うとか、なにやってたんだよ。
「連れは?」
「連れ?」
まあ男の顔とか見たくないから、とりあえず連れていこう。
混んでるしなんとなく手を引いて歩き出したら、おとなしくついてくる。
流されてんなよ、男連れなんだろ。俺に後ろめたいとか少しはあるわけ?
ついたらついたで、健太にいいように振り回されてる。『寂しいからずっと手をつないでて』だと?俺に言えよ。
でもなんだ? やけに親しいな。
どうやら健太は、姉貴の子どもらしい。連れがいるってのも勘違いで、2人で来てたみたいだ。
沢田さん、妙な情報勘弁してくださいよ。
しかたないから正直に謝る。
「さっきごめん。無視した」
「 ……ああ。うん。ちょっと傷ついた」
「 今度は子連れバツイチかよ、と思って」
勘違いの理由を話すと、香さんは呆れてたけど納得した様子ですぐ許してくれた。
こういうとこ、いいんだよな。引きずらない。
一応さっきの子はなんでもないって言っとく。変なとこばっかり見せてるな。
またなんでも食ってんだろとか言われそうだ。うまくいかないな、なかなか。