食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
翌週、お礼にごちそうするって珍しく向こうから誘って来た。弱いくせに飲みたいとか言うし、ちょっと期待する。
夜の仕事してたでしょと言われて、また遊んでたんだろって話かよ、とげんなりしたけどそうでもない。
遊んでるんじゃなくて仕事で相手してたんでしょって。
まあ、そうだよ。多少遊んでもいたけど、基本は仕事だよ。
黒服やってたって言ったら、嬉しそうにしてる。何が嬉しいんだか。
ついでに聞いたら、自分の話も始めた。
なんだ? これ、いけるな。
ガードが緩んでる、明らかに。
「興味出てきた?」
「ちょっとね」
俺の話もちょっとしてみる。夜の仕事してたのは、金が必要だったからだってこと。まあ楽しかったのも本当だけどね。
「それ聞いたら、私はお嬢かもね」
相変わらず、お嬢とか姫とか言われるのが嫌らしい。なんで落ち込むんだよ、そこで?
「女の子はお金の苦労なんかしないほうがいいよ」
ほんとに。いいことないよ、そんなの。
弱いのわかってて飲ませるのはどうかと思うけど、今回はしかたない。何しろ固い、この姫は。
ちょっと飲ませて、帰りにキスして、手つないで、家に入れるところまで持ち込んだ。
そこまで行けば、さすがに逃さない。
夜中に目が覚めた。窓からの薄明かりで寝顔を眺める。意外と幼いな、無防備だ、当たり前だけど。
顔にかかる髪を指ですいて、頬に口づけた。
やばいな、俺ほんとこういうの久しぶりなんだけど。寝顔もかわいいとか。
さっきも相当余裕なくて、高校生みたいにがっついたしなあ。
まあいいか。許してくれるだろ、あの程度。
腕の中の彼女をつぶさないよう気をつけて抱きしめて、また眠りに戻った。