食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
真奈ちゃん担当は、俺だよな。香さんにも頼まれたようなもんだ、あれは。時々ああやって、目で助けを求めてくる。ずるいよなあ。


半田さんに断って、真奈ちゃんを連れて帰ることにする。飯食わせて話聞いて、落ち着かせて帰そう。



思ったよりよくしゃべる。相当溜まってたな、悪いことした。とにかく聞いてやる。これやると女の子に惚れられて困ることあるんだけど、今回は今更だから。


「私が香さんを避けてて、それでこんなことに」

「それ言ったら俺もそうだし。巻き込んでごめんな、真奈ちゃん」

俺と香さんが揉めてるのに巻き込まれただけなのにな。


ようやく告られたから、ありがとうって言いつつきっちり断った。もうちょっと早ければ、こじれなかったかなと思うけど、しかたないよなこればっかりは。

そのあとも、とにかく反省して色々言ってる。俺とかやめて、もっとちゃんとした奴がいいよ、こういう子は。



顔を真っ赤にして、『1回だけ抱いてもらえませんか』と帰り際に言われた。軽く驚いたけど、それより、やっとわかった。

田代さんに、似たようなこと言って断られてるんだ、あの人。ちょうどこのくらいの年の時か。

バカか。1回で済むわけないだろ、社内だぞ。

わかってないな、ほんと。



真奈ちゃんには好きな人がいるからって、謝った。

田代さんは気を持たせるようなことしてたんだろ。今でもそんな感じする。そういうの最悪だけどな。

手出してたらもっと最悪か。ありそうだしなあ、結婚間際の上司と部下なんて。



我慢したんだろう、香さんのためにも。




そうか。昔何があったのか気になってはいたけど、何にもなかったのか。香さんにとっては今も憧れの人的な位置づけなんだろうな、田代さんは。

まあ、比べられて敵わないのは同じなんだけど。

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