食わずぎらいがなおったら。-男の事情-

今のうちとか言ってた通り、すぐ後に田代さんちの子が無事産まれた。

香さんと出産祝いを買いに行くという真奈ちゃんに、車を出せないかと頼まれる。

「わざわざそんなに遠く行くの?」

「香さんが行きたいお店があるみたいなんです。車があったらすごく助かるんです」

最近ぐいぐい話しかけてくるんだよね、この子。キャラ変わったって言うか、こっちが素だな。

香さんとどうなってるとかも直球で聞いてくるし、まっすぐだ。




で、当日になったら妙な言い訳して来なかった。そんなことだろうと思ったよ。いい子だな、真奈ちゃん。



香さんはいかにも居心地悪そうにしてたけど、ドライブしてるうちに調子出てきたらしく、久しぶりに色々話した。

「田代さんち、死産があったって知ってる?」

「聞いたことある」

「それで奥さんのために管理に異動したでしょ。離婚しそうだったんだって」

「そっか」

「あの時ね、平内どこから聞いてたかわかんないけど、ちょっと幸せになったからって調子に乗って世話焼きしないでみたいなこと言っちゃって。やっと幸せになった人に何言ってんの、ってほんと自分にうんざりしちゃって」

「ああ、あの時」

自己嫌悪だったのか、予想外。

潔癖、清潔、いや、高潔か。

わかりやすいようで微妙にわかりにくい思考回路だ。こういうとこが姫っぽいのかもな。



「でもきっと、ずっと不安だったよね、産まれるまでは。よかったぁ、元気な子で」

嬉しそうだ。田代さんの話とか面白くないけど、まあ嬉しいんならいいよ。

好きだった男の子供か。本気で喜べるんだな。過去のことってことか。




田代さんが吹っ切れて、真奈ちゃんが引いてくれて、まだなんか問題あるか?

もう1回押してみるか、今日。
< 42 / 52 >

この作品をシェア

pagetop