食わずぎらいがなおったら。-男の事情-


しばらくして携帯が鳴った。メッセージを確認する。

【まだ飲んでる?】

あ、こっちも話聞きたいとかあるのか。

「すいません武田さん、俺そろそろ」

「あれ? 女?」



【もうすぐ出る】

と、とりあえず送る。

「お前合コンとか誘っても来なくなったって言われてたけど、彼女いるんだ」

否定するのもおかしいから、うなずく。

「どんな子?」

隠しとくのもなあ。

「3つ上で、鈍感な感じの」

「……え。マジで?」

「言うなって言われてるんで、これ以上言えないんですけど」



しょうがないだろ、これは。男同士の付き合いってのもあるんだよ。怒るかな。



「マジかー。 …悪い、俺結構ダメージ受けてる」

「奥さんに言いつけますよ」

「いやー。お前やっぱりただイケメンなだけじゃないんだな。あいつそんな面食いじゃないのにな」





駅まで歩いてると、電話が鳴った。出ないわけにも行かない。

「ごめん、まだ電車乗ってない」

『え、そうなの?もう着くかと思った』

「悪い、駅着いたらかける」

切ってもまだ武田さんが見てる。

「家行くのか、これから」

「異動の話、聞きたそうなんで」

「泊まりか」

「たぶん」

聞いといて、落ち込んでる。どういう心境だよ。



駅に入る直前に武田さんが立ち止まって、こっちを見て真面目な顔で言った。

「大事にしてやれよ」

「はい」

「じゃあな」

それだけ言うと、手を振って去っていった。
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