食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
「真奈ちゃんに、付き合ってる宣言したらって言われたよ。俺がかわいそうらしいよ」

香のリビングのソファで仕事関係の本を読みながら、軽く言ってみる。

「私と付き合ってるなんて言われても、タケルにメリットどこにもないよ」

まあね、やっかまれるぐらいかな。

「なんでそんなに嫌なの。ちなみに田代さんは気づいてるよ」

「え?なんで」

「さあ。あの人何考えてるかわかんないからな」

ということにしておこう。実際考えてること読み切れないしな、あの腹黒。


「ちょっとタケルと似てるとこあるよね」

は? ムカつくこと言ってんなよ。

言った本人は涼しい顔だ。素で言ってるのが腹立つよな。

「似てないだろ、どこがだよ」

「えー。だから何考えてるかよくわかんないとこと、あと、仕事ができるところとか」

そうかよ。それであの人のほうができるってんだろ、ムカつくな。

「褒めてるのになんで怒るの?」

「別に」

そういうの褒めてるって言わねえよ。




「でもタケルのほうがかっこいいよ」

フォローのつもりか? 顔ね、今さらそんなので勝ってもな。

「タケルはやっぱり声がかっこいい」

声?

「あの人は声だけじゃないんだろ」

ふてくされた声で思わず言ってから後悔した。妬いてるってばれ過ぎだ、これじゃ。



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