食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
「なに言ってるの、タケルだってそうでしょ。田代さんもタケルのことすごく褒めてたよ。あ! あれって私に言ってるの? うわぁ」

1人で赤くなってる。何話してんだ、会社で。

「絶対ばれてると思うよ、その態度」

「そんなことないってば。会社ではポーカーフェースだよ」

思わずふきだした。できないだろポーカーフェースとか。やってみろよ。

「なによ」

「かわいいなぁと思って」

まあいいや、俺のものだし。仕事もそのうち追いつくよ、あの人に。

「なにそれ。なんで機嫌直ってるの?」

「別に」

「ほら、なに考えてるのかわかんない」

「そういうのが好きなんだろ」

言って抱き寄せた。まだ何か言おうとした口をキスで塞ぐ。

「しすぎって言ってる」

文句言ってるけど、気にしない。今日はもういいや、と読んでた本もソファに伏せた。



「毎日食うって言った。忘れんな」

「忘れてないけど、偉そう」

「大丈夫だよ、姫のほうが偉いに決まってる」

「姫とかやめてって言ってる」

「はいはい」

これ以上機嫌を損ねないうちに、腕を膝裏に入れお姫様だっこにして寝室に連れていくことにする。



「ちょっと!」

「やめませんよ、姫」

自分で言っといて恥ずかしいな、これ。

「そういう慣れてるとこが嫌なの、バカ」

恥ずかしそうに胸を叩いてくる。

慣れてるわけないだろこんなの。バカはどっちだ。

ベッドに降ろしてキスしたら、やっと抵抗をやめた。



恥ずかしいついでに耳元で言ってみる。

「俺が守るよ」

何も言えないようにそのままキスで塞いで、いつもより丁寧に抱いた。






久しぶりに夜中に目が覚めた。眠ったままの香に口づけて、もう一度囁く。

「俺が守るよ、ずっと」

意味がわかってないだろうけどな、俺のお姫様は。




THE END
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