食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
姫を守る男
その日も帰りに、会社帰りに何人かでいつもの居酒屋に流れた。香さんは武田さんの呼び出しに応じて後から来ていた。
トイレを出た廊下で、なぜか男に詰め寄られてる香さんに出会った。なにやってんだ、誰だこいつ。
「どうしたの」
とりあえず声をかける。男の方に文句つけると突然キレられたりするからな、酔ってると。
「あ、ごめん。戻んないと。またね」
香さんは俺の腕にしがみつくようにして、ぱっとそいつから離れた。
「姫、あっちにみんないるからね!」
姫ってなんだよ。男は陽気に戻って行ったけど。なんだこれ。
「ありがと。戻ろ」
説明する気はないようで、手を離してさっさと席に戻って行く。こっちは酔ってはいないようだけどな。
しばらくして、奥の座敷を黒縁メガネの男が覗いた。
「あ、ほんとにいた」
「高木くん…… 何飲みなの?」
「研究室。島田が騒いでるから、みんなにバレてるよ。ちょっと顔出して」
親指で向こうの席を指す。おとなしそうな兄ちゃんだけど、割と強引だな。