食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
「みんなあんなに酔ってるの?」
いかにも嫌そうに香さんが聞く。
「何人か。大丈夫、姫が顔見せればそれで満足するって」
姫って普通に呼ばれてるのか?
まだ渋い顔をしてる香さんに、メガネくんが重ねて言った。
「俺が守る」
「わかった」
ため息をつきながら立ち上がった香さんが、武田さんに声をかける。
「ごめん、あっちに知り合いいるから、ちょっと行ってくる。戻らなかったら呼びに来てくれる?」
武田さんの返事も聞かず、さっさと出て行く。武田さんはもちろん機嫌を損ねた。
噂好きの沢田さんが食いついた。
「なんですか、今の。姫って言ってましたよね」
「あいつ大学の時に姫って呼ばれてたんだって。聞いたことある、同じ学科のやつに」
「俺が守る、ですよ。あんなこと言わせといていいんですか、武田さん」
沢田さん、そこ深掘りしないほうがいいんじゃないですか。
「姫か、それっぽいな、香ちゃん。かしずかれてそうだもんな」
「香姫か、お嬢っぽいよね。いいなー私も呼ばれてみたい」
他の人達も乗っかってきてる。上手く逃げときゃよかったのに、下手だな、あの人。